礼文島と伝説の桃岩荘(前編) 知性、教養、羞恥心、まとめてポイ!

伝説のユースホステル
北海道の礼文島。
ここには、知る人ぞ知る「桃岩荘」という(とにかくやばい)ユースホステルがある。
時は令和、ネットが世界を覆い、AIが目まぐるしく成長を続ける世の中。
桃岩荘はそんな時代の流れをまったく無視し、ポツンと海に浮かぶ礼文島で「ユースホステルかくあるべし」を貫き続けて変わらない。
大学時代、毎年夏には北海道をひとり旅していました。昔の写真を探してたら見つけた「北海道2005」のフォルダ。懐かしの桃岩荘の写真がたくさん出てきました。
あのときのことを思い出しながら、ちょいと書いてみようと思います。
(*なにぶん15年前の記憶ですので、間違っていたらごめんなさい…そして写真は15年前のコンデジなので画質についてもあしからずです)
突撃 桃岩荘!

↑ 北海道の美瑛町、パッチワークの丘にある親子の木。写真家の前田真三さんが好きで、それがきっかけで訪れるようになった北海道。毎年のように行きました。
北海道の各地のユースホステルで、「やばいユースホステルがある」といううわさを度々耳にしていた。それが「桃岩荘」。
北海道の北の果て、礼文島にあるという。
これは行ってみなければ、と決意したのが2004年。
そんなわけで2005年の夏の北海道ひとり旅。
1年越しの夢(?)を叶え、稚内からフェリーに乗って礼文島の桃岩荘を目指していた。
うわさに聞く桃岩荘。とにかくやばいらしい。
事前に聞いてる情報だけでもかなり変態的なことがわかっていた。
果たして自分はやっていけるのか、不安でいっぱいである。
桃岩荘には2泊3の滞在予定として、2日目は桃岩荘が開催する礼文島縦断トレッキング「愛とロマンの8時間コース」に参加することにしていた。
桃岩荘の洗礼

↑ こちらは礼文島からの帰りに撮ったものです。1日4便のフェリーが運行されています。
およそ2時間の船旅を経て、礼文島の港に到着すると、青色をした目立つトラックが待っていた。
ドアの部分に「桃岩荘」と書かれている。
送迎バス(トラックだけど)がとてもわかりやすい 笑
乗客がそろってさあ出発、というところで、同乗するヘルパーさんがいと怪しげなことを言い出した。
「この車は最新の音声認識車両です!みなさんで『発車オーライ!』って叫んでくださいね!」
きたか…、動揺するが平静を装う。
疑問の声をあげる人もおらず、みんなで「発車オーライ!」と言う。が、車は動かない。
声が小さいと音声認識できないのだ、とヘルパーさんに教えられ、何度か「発車オーライ!!!」を繰り返し、送迎トラックはようやく動き出す。
*ユースホステルには「ヘルパー」とよばれる方々がいます。いわゆる宿のスタッフの方々で、住み込みで働きながら宿泊者たちのお世話をしてくれます。このときのヘルパーさんで覚えているのは「つけもの石」さん、「シャンプー」さん。ご存知の方いらっしゃいますか 笑??
桃岩荘までは車でたぶん10分~15分くらい。
途中、桃岩トンネルというトンネルを通るのだけれど、ここでまたひとつの儀式が待っている。
それが、「知性、教養、羞恥心、まとめてポイ!」の儀式だ。
ヘルパーさんが言うには、乗客たちは、
「知性、教養、羞恥心、まとめてポイ!!」
と大声で叫びながら、大きなボールを両手で外に放り投げるような動作をしなければならないのだ。
乗客たちの間に「えっ」と若干の緊張が走る。
しかし、ここはもう桃岩荘のテリトリーなのだ。
覚悟を決めてみんなで「ポイ!」の儀式完了。
トンネルを抜けるとほどなくして送迎トラックは桃岩荘に到着。

↑ 奥にある赤い屋根の建物が桃岩荘。周囲は草原と海で何にもありません。
外観はわりときれい。赤い屋根と茶色い外壁の建物で、いわゆるガラガラ戸の上に「桃岩荘」の看板がかかっている。
中は古さを感じさせるものの、手入れが行き届いてきれいな木造。なかなか広い。もともとはニシン漁をする方々の待機所だったらしい。
着いたのは夕方で、チェックインの手続きをすませてドミトリーのベッドの横に荷物を置く。稚内からここまでずっと移動だったので、ようやくホッと一息つけた。
外に出てみると、夕日がとてもきれい。桃岩荘は礼文島の南西部に位置する。低い崖の上のようなところに建っていて、海が見える場所。

伝統の「ミーティング」
夜には中央の広間で「ミーティング」が行われる。
ミーティングというやつは、昔々のユースホステルではどこにでも設けられていた時間で、ホステルと宿泊者たちの交流会みたいなもの。
今は時代も変わってミーティングの時間を設定しているユースも少なくなってしまったけれど、桃岩荘では健在。
ミーティングの内容はユースホステルでそれぞれだが、ここ桃岩荘のミーティングはとにかく「歌って踊る」。
知性と教養と羞恥心を捨ててきた宿泊者たちが、ヘルパーさんと一緒になってとにかく歌って踊る…!
残念なことに、動きが激しすぎてその様子を写真には捉えられなかった。

↑ ミーティングのようす。踊ってる姿は動きが激しすぎて写真に納まりませんでした…ミーティングでは宿泊者がみんな集まるのですが、若い方から年を重ねた方まで、いろんな年齢層の方がいました!
礼文島縦断トレッキングは、桃岩荘が主催するイベントの1つだ。
このミーティングの場で、翌日の礼文島縦断トレッキングに参加する宿泊者は、前に集められてダンスを披露しなければならない。
非常に恥ずかしいのだが、知性と教養と羞恥心を捨てているので理論上できるはずだ。
というわけで、
「ギンギンギラギラ夕日が沈む、ギンギンギラギラ日が沈む~!」
と大声で歌って踊り、愛とロマンの8時間トレッキング、参加の儀式も無事にやり遂げることができた。
(*歌と踊りについてはヘルパーさんがとても丁寧に教えてくれます)
激しい(?)ミーティングを終え、明日はいよいよ礼文島縦断トレッキング、愛とロマンの8時間コース。
はてさてどうなってしまうことやら…
こちらに続きます ↓